健康保険が効かない為ノロウイルスの検査を行わない医療機関が多い
食中毒菌などは培地という状況下で数を増やす事ができ、簡単に実験に使用する事ができますが、ウイルスは食中毒菌と違って他の生き物の細胞に入り込んで増殖しますので、数を増やすためには「動物細胞培養」と呼ばれる方法を使います。しかし、ノロウイルスは、この増殖させる方法が確立されていない為に、治療薬やワクチンの開発が遅れています。ノロウイルスは食中毒菌とは異なり、食品では増殖せず、人の腸のみが増殖可能な場所なのです。
ノロウイルスの感染経路は糞便や嘔吐物を介して人から人に感染を広げていきます。適切に感染防止対策を行なえば集団感染のリスクを低減させることが可能でもあります。激しい下痢や嘔吐の原因を特定する為には詳しい検査が必要です。その為には、ウイルス学的な検査が必要であり時間も費用もかかります、通常、ノロウイルスを疑われた患者さんの検査は、患者さんの嘔吐や下痢の汚物を用いて、電子顕微鏡法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法などの遺伝子を検出する方法で行います。リアルタイムPCR法ではウイルスの定量も行うことも可能です。ふん便には通常大量のウイルスが排泄されるので、比較的容易にウイルスを検出することができます。以前はPCRと呼ばれる検査方法でのみ診断ができましたが、結果が出るためには数日間必要であった為「診断がついた時は患者さんは症状が回復していた」という事になってしまい、集団感染でも起こらない限り医療機関も積極的にウイルスを同定する検査はしない傾向がありました。症状が無くなっても、感染者の糞便からは一週間程度ウイルスが検出されてしまいますし、さらに10個程度のウイルスでさえ症状を引き起こす原因になると言われています。
ノロウイルスの検査は特別な場合を除いて適用とならない
ノロウイルス検査は、健康保険の適用にならない場合があります。ですので、病院でも激しい下痢や嘔吐の症状を訴えたとしても医師は詳しい検査をせずに症状で診断する事があります。検査で健康保険の適用を受ける為には以下の条件が必要です。(平成24年4月より保下記に該当する場合に保険が適用となります。)ノロウイルス検査で健康保険適用となる条件
ノロウイルスに感染していたと検査で診断されても特別な治療方法もなく数日で回復する事から健康保険の対象者は、小児や高齢者さらには今後の病状に影響がある方に限られております。
① 3歳未満の患者様
② 65歳以上の患者様
③ 悪性腫瘍の診断が確定している患者様
④ 臓器移植後の患者様
⑤ 抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、又は免疫抑制効果のある薬剤を投与中の患者
ノロウイルスの検査をしても治療方法が無い
病院の検査で感染している事が診断されても治療する薬は開発されておらず、特別な治療をする事ができません。また、下痢や嘔吐の症状は、2~3日程度であり比較的短期間に回復する為、自宅で療養するのが一般的です。しかし、感染よる激しい下痢や嘔吐により脱水症状がああらわれた場合には、輸液(点滴)を行い喪失した水分やミネラル(電解質)を補う対症療法を行います。下痢や嘔吐の症状が治まるまでは、自宅で安静にしている事をおすすめします。また、家族が感染した場合には二次感染にならないようにシッカリ次亜塩素酸ナトリウムで消毒をするようにしましょう。特に他の人が感染しやすいトイレ、お風呂、食事は注意が必要です。