塩素系漂白剤でノロウイルスを消毒
漂白剤を使用したノロウイルス消毒方法は、厚生労働省も推奨している方法です。患者さんが下痢や嘔吐などの症状でトイレなどの設備を汚してしまった場合には、非常に有効です。塩素系漂白剤に含まれる次亜塩素酸ナトリウムの遊離塩素類が細菌やウイルスの膜を破壊し死滅させる為です。また、遊離塩素類の作用により細胞内の酵素反応の阻害、細胞内タンパク質の変性、核酸の不活化などが考えられます。漂白剤でも酸素系漂白剤には、次亜塩素酸ナトリウムが含まれておりませんので消毒効果はありませんので間違わない様にしましょう。
ノロウイルス患者さんの下痢便1gに1億個のノロウイルスが含まれていると言われています。もし、患者さんが勢いよく下痢をした場合は、便座などを汚染します。指先に少量でも下痢便が付着したままドアノブや手すりなどに触れれば、汚染範囲は拡大します。ノロウイルスは、寒く乾燥した冬場なら1ヶ月程度は感染力を持ち続けています。感染者が家庭にいるトイレでは、漂白剤を使用した消毒液で感染が拡大しない様にシッカリ消毒をしましょう。
塩素系漂白剤で消毒する方法
家族や施設内にノロウイルス患者さんがいる時は、非常に感染リスクが高くなります。特にトイレを中心にドアノブや手すりなど多くの人が触れる場所を重点的に漂白剤で消毒することをおすすめします。感染予防なら漂白剤の濃度が200ppm程度をおすすめします。また、感染者が廊下や部屋で嘔吐や下痢したら特に注意が必要です。まず、ノロウイルスが飛散しない様に汚物の上に新聞紙を置き、漂白剤で作った500~1000ppmの消毒液を上から湿らせ湿布の様にして放置します。そのまま新聞紙ごと汚物を回収しビニール袋に入れます。この時、ビニール袋は二重にして確実に消毒するため1000ppmの漂白剤で作られた消毒液を入れて中身が出ない様に密閉します。汚物は、燃えるごみとして廃棄します。さらに床など汚染された部分を確実に消毒するため200ppmから500ppmの漂白剤で作った消毒液で綺麗にします。漂白剤によって含有量が異なりますので、消毒液を作る際には、内容を確認しましょう。詳しくノロウイルス患者さんの汚物処理方法を説明しています。塩素系漂白剤は、刺激が強いため非常に短期間に大量摂取すると人体への影響があります。また、肌荒れの原因にもなりますので塩素系漂白剤を使用した清掃を頻繁に行う場合には、手袋などを使用することをおすすめします。 詳しくは「次亜塩素酸ナトリウムで消毒」を参照してください。
アルコール消毒はノロウイルスに効かない
腸管出血性大腸菌O157などの食中毒菌やインフルエンザなどを消毒するのに用いられているアルコールですが、ノロウイルスにはアルコール消毒が効きません。アルコールが効かない理由は、ノロウイルスの構造が食中毒の原因菌と異なるからです。多くの食中毒菌やウイルスには、エンベロープ(envelope:脂質膜上構造)があります。アルコールは、このエンベロープを破壊する事で効果を発揮しているますが、ノロウイルスにはエンベロープが無くアルコールでの効果は期待できません。この様なエンベロープを持たないウィルスは消毒抵抗性がおおむね強く、アルコールや逆性石鹸(ウエルパス)などでは、あまり効果がありません。ノロウィルスを確実に消毒する場合には、1000ppm(特別の場合5000ppm)の漂白剤で作った消毒液の使用が指示されています。
アルコールと塩素系漂白剤の消毒の違い
食中毒を起こす 微生物類 |
エタノール | 次亜塩素酸 ナトリウム |
加熱 |
細菌型食中毒 (カンピロバクターほか) |
◎ 効果あり |
◎ 効果あり |
◎ 効果あり |
毒素型食中毒 (ボツリヌス菌) |
× 毒素には 効果なし |
× 毒素には 効果なし |
× 毒素には 効果なし |
ウイルス性食中毒 | × 効果なし |
◎ 効果あり |
◎ 効果あり |
インフルエンザ | ◎ 効果あり |
◎ 効果あり |
◎ 効果あり |
自然毒や化学物質 | 中和・解毒は 不可能 |
中和・解毒は 不可能 |
中和・解毒は 不可能 |
塩素系漂白剤を使用したノロウイルス消毒液の作り方
ノロウイルスを消毒は、市販されている漂白剤を水で希釈して使用します。各メーカーの商品は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が異なりますので割合を確認ましょう。主なメーカーの漂白剤で100~200ppm水溶液の作り方を簡単に説明しています。正確な濃度の水溶液を作るためにキャップなどの計量計を使用し、水の量を調節する事で希望する濃度の水溶液を作る事が可能です。まず、必要なものとして塩素系漂白剤、使用済みのペットボトル、手袋を準備しましょう。塩素系漂白剤は非常に刺激が強い成分で、素手で作業して指先や手に付着すると手荒れの原因になりますので手袋を着用しましょう。特に皮膚が弱い方は、手袋を着用して作業する事をおすすめします。まず、漂白剤を必要量をペットボトルに入れます。この時にキャップを使用しますと計量も簡単で便利です。そして水を入れてペットボトルの蓋をしてシェイク(かき混ぜ)ます。これで漂白剤から作った消毒液が完成します。消毒液は使用用途によって濃度が異なります。使用目的に合わせた濃度を作る様にしましょう。 詳しくは「次亜塩素酸ナトリウムで消毒液の作り方」を参照してください。
使用目的 | 次亜塩素酸ナトリウムの濃度 |
---|---|
物品・衣類などの消毒、床の清掃 | 100-200ppm |
嘔吐物そのものを処理するとき | 1000ppm |
消毒液は家庭用塩素系漂白剤を水で薄めて作ります。原液濃度が5%の家庭用塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)で作る場合、嘔吐物や鼻水、便などが直接付着した場所を消毒するには50倍(1000ppm)に希釈したものを使用。感染者が直接手を触れたドアノブや手すり、トイレの便座などに使用する場合は250倍(200ppm)に希釈したもので充分です。消毒液を作る際には、必ずゴムかビニール製の手袋をはめて作業をしましょう。絶対にトイレ用洗剤など、酸性のものと混ぜないように注意して下さい。まず、ペットボトルに水と漂白剤を入れます。ペットボトルに少量の水を入れます。50倍希釈の場合は10cc、250倍希釈の場合は2ccの漂白剤を入れ、そのあと水をいっぱいまで入れてください。ペットボトルのキャップ1杯は約5ccなので、10ccの場合は2杯。2ccの場合は半分以下、小さじ2分の1程度を参考に。次によく混ぜ合わせます。ペットボトルのふたをしっかりと閉め、よく振れば完成です。
塩素系漂白剤による消毒の注意点
入れる塩素系漂白剤の分量を間違わないようにしてください。非常に少量でも塩素系漂白剤の量を間違えますと、漂白剤に含まれる塩素の濃度が変わってしまい、消毒(殺菌)効果も発揮できない場合もあります。塩素系漂白剤は、非常に刺激の強い薬品です。ですので、塩素系漂白剤の原液が指に付着したり、目などに入らないよう注意してください。もし、塩素系漂白剤などの原液が付着した場合には、水洗いをして、症状が改善しない場合には病院に行くようにしてください。また、塩素系漂白剤の消毒液は、大量に作らない事をおすすめします。作るのが面倒だからといって大量に消毒液をを作り数日間使用する事は、漂白剤に含まれている塩素濃度が低下をし効果が発揮しない場合があります。ですので、その日使う分を作るなどこまめにに作る事をおすすめします。