寒く乾燥する冬場の期間はノロウイルスの感染に注意
上記で説明した通り、ノロウイルスの流行は、寒くなる秋から冬にかけてがピークです。日本国内で流行した初期の段階から牡蠣などのに二枚貝がノロウイルスに汚染されている調査報告があり、また、秋から冬にかけて牡蠣を生食する時期とも一致した為に牡蠣が、原因食材と言われる様になりました。しかし、その後の研究で、原因となった食材が牡蠣以外の食材で多く発生している点や牡蠣を生食しない冬場以外(夏場)にも流行した為、牡蠣の生食が流行の原因だという説が薄まりました。一方、食中毒を起こした原因施設の多くで、調理や食品加工に従事するスタッフが病原体を保有し、同じ遺伝子のノロウイルスが患者さんの便からも検出され二次感染によるものが最近の流行の原因だと言われています。特に冬場は、ノロウイルスが不活化するまでの時間が長く(下で説明)、患者さんの下痢便や嘔吐物などの汚物に含まれる病原体が強い感染力を持ち続けています。その為、手洗いが不十分により食品や周囲の器具や備品を汚染し感染が拡大し流行する事が多いです。
寒さに強いノロウイルスが感染する冬場
ノロウイルスは、気温が下がる冬場はノロウイルスが不活化(死滅)しづらくなる事もわかってきました。最もノロウイルスが活動するのに適した温度は、0度から2度程度だと言われており、この温度の環境ならば約1か月は不活化しない事もわかってきました。その為、冬場はノロウイルスが不活化するまでの時間が長くなり、色々な場所がノロウイルスに汚染され、感染リスクも高くなると言っていいでしょう。ノロウイルスに感染した患者さんは、激しい下痢や嘔吐の症状を繰り返し、便器やドアノブなど様々な場所を汚染します。気温が下がる冬場は、ノロウイルスに汚染された場所が消失しづらくなる為、至る場所がノロウイルスに汚染されます。特に注意しなければいけない場所は、不特定多数が利用する公衆トイレ、駅や商業施設さらには飲食店のトイレは注意が必要です。その為、飲食店従業員などは、利用客が使用するトイレで手指がノロウイルスに汚染され、使用後の手洗いが不十分によりノロウイルスを保有し食中毒の原因となる事は少なくありません。尚、一般的に冬場に感染症が増える理由は以下の2つがあると考えられています。
冬はヒトの免疫力低下し感染
一方体温が低下すると代謝活動が低下し、免疫を担う細胞の働きも低下します。その結果、人の抵抗力が下がってしまいます。また乾燥によりのど・鼻腔・気管支の粘膜が乾いた状態では、本来粘液でウイルスの進入を防いでいるのどや鼻の粘膜が乾燥して傷み、ウイルスが体内に侵入しやすくなり、感染を起こしやすくなります。
12月から2月の冬場は特にノロウイルスの感染に注意
冬に流行する感染性胃腸炎の大半は、ノロウイルスやロタウイルス等 のウイルス感染によるものと推測されます。ノロウイルスによる感染性胃腸炎の患者発生は、毎年11月に入ると急増し、12月にピークを迎えます。感染性胃腸炎には、真冬である12~1月頃に一度ピークができた後、2~4月にもう一つなだらかな山がみられます。前半はノロウイルスが多く、後半はロタウイルスが主な病原体であると考えられます。最新のノロウイルス食中毒の発生状況は、保健所が監視をしており東京都の場合は、都内261か所の小児科定点医療機関からの報告状況をまとめています。また、感染症発生動向調査における定点医療機関から保健所への報告において、定点当たり患者報告数が20人/週を超えた保健所の管内人口の合計が、東京都の人口全体の30%を超えた場合には、広域的に流行が発生・継続しているとして警報を発しています。