ノロウイルスによる感染原因は?

ノロウイルスに感染者数が食中毒原因物質の中で一番多い 

ノロウイルス(Norovirus)は、過去にNorwalk-like virusesやsmall Round Structured Virus:SRSVとも呼ばれていましたが、2002年にパリで開催された国際学会で現在の名称になりました。日本での名称変更は、主管である厚生労働省が2003年8月に発表しています。詳しくは「ノロウイルスの歴史」を確認ください。ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、全体の7~8割が秋から冬に集中しています。詳しくは「食中毒と感染性胃腸炎の違い」を確認ください。以前は、インフルエンザ同様に寒く乾燥した冬に流行する感染症として扱われていましたが、最近では夏でも感染の報告がありますので1年中注意が必要です。感染原因の多くは、病原体に汚染された飲食物を摂取する事で起きる経口的な感染であり、空気感染や飛沫感染のリスクはゼロではないが非常に低いです。(ヒトからヒトへの感染として、感染者のクシャミなどによる飛沫感染あるいは比較的狭い空間などでの空気感染によって感染拡大したとの報告もあります。しかし、結核、麻疹、肺ペストのような広範な空気感染ではなく、粉塵や飛沫感染が大半です。)経口感染は、感染者が下痢や嘔吐など吐き下しをした汚物を直接あるいは間接的に接触し、汚染したまま食品に接触する事で感染が拡大します。

ノロウイルスの感染の多くは経口感染

感染の多くは、ノロウイルスに感染した病原体保有者が手指を十分に洗わず、そのまま食品に触れた事で食品が汚染し、生食もしくは加熱不十分のまま食べてしまった事で発生します。これを二次感染と言います。その為、過去に発生した食中毒の原因食品は、サラダ、果物、パン、ケーキ、和菓子、水など加熱をせずそのまま食べられる食品も多く含まれています。以前より指摘があった牡蠣などの二枚貝が感染原因は、ノロウイルスに汚染した海域で育成した二枚貝は、中腸線が汚染されている事が生物学的に判明していますが、綺麗な海域で育った牡蠣は生食をしても問題がない事もわかっています。その為、牡蠣を生食する際には、「生食用」を選ぶようにしましょう。

ノロウイルスは、一般的な食中毒菌が増殖する「温度」「湿度」「栄養」の3条件が揃っても増殖せず、私たちの体内で増殖をします。そして、激しい下痢や嘔吐など吐き下した汚物には、大量のノロウイルスが含まれ下水から汚水処理場を経由して河川に排出され沿岸部を汚染します。その為、汚染された海域で育った牡蠣などの二枚貝の中腸線に蓄積され、これらを生食もしくは加熱不十分のまま食べると再びヒトは感染します。最近の報告では、感染者を看護や世話をする際に、患者の吐物や便などから直接感染するヒト‐ヒト間の感染があることも明らかにされています。 糞口感染するウイルスであるので、食品衛生上の対策としては、食品の取り扱いに際して入念な手洗いなど衛生管理を徹底すること、食品取扱者には啓発、教育を十分に行う事が大切です。

感染すると激しい下痢や嘔吐の症状

ノロウイルスに感染し症状が現れるまでの期間(潜伏期間)は1日から2日です。感染初期に37~38度の微熱が現れ、嘔気、嘔吐、下痢などの症状が現れます。(患者さんによっては、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感などが現れる人もいます。)いずれの症状も激しいのが特徴ですが、症状が出始めた最初の数日が最も激しく、徐々に回復し数日から1週間程度で自然に回復します。ノロウイルス感染者に対する治療は、治療する薬が開発されておらず対症療法が基本です。その為、病院でノロウイルスによる食中毒や感染性胃腸炎を診断されても特別な治療や投薬をせず、整腸剤や痛み止めなどの処方で自宅で安静にして回復するまで我慢しなければいけないです。しかし、抵抗力や体力が弱い高齢者や乳幼児は、激しい下痢や嘔吐による脱水症状嘔吐物が気管に入る事で発生する誤嚥性肺炎や窒息に注意しなければいけません。

感染力が非常に強いノロウイルス

下痢や嘔吐などで吐き下しをした汚物には、強い感染力がある不活化していないノロウイルスが大量に含まれ注意が必要です。牡蠣など二枚貝は、仕入をした段階で既に汚染されている事が多いが、ノロウイルスに感染した調理や食品加工の従事者によって食品の汚染が拡大している事が多いです。その為、調理や食品加工に従事する者は、日頃から健康チェックを行い、下痢や嘔吐の症状がある時は業務(作業)をさせない事が重要です。また、ノロウイルスに感染しているものの下痢や症状が無い病原体保有者も少なくないです。その為、下痢や嘔吐の症状が無くても日頃から手洗いの徹底や食品の十分な加熱調理をする事も感染拡大では重要です。一般に、加熱した食品であればウイルスは完全に失活するので問題はないが、サラダなど加熱調理しないで提供する料理は特に注意が必要です。汚染しやすい食品に近づけない、手指を清潔にして食品に触れる、包丁、まな板を消毒する事も大切です。ノロウイルスは、胃液の酸度(pH 3)や飲料水に含まれる程度の低レベルの塩素には抵抗性を示す事もわかっています。また、60℃程度の熱には抵抗性を示します。ノロウイルスを死滅(不活化)させるには、次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒するか、食品の中心温度が85度から90度以上で90秒以上の加熱を推奨しています。 

ノロウイルスの感染を遺伝子レベルで研究

未だに遺伝子構造や感染メカニズムの全ては解明されていません。体内に侵入したノロウイルスは、小腸の上皮細胞に侵入して自身の遺伝情報(RNA)を使い増殖を繰り返します。そして、上皮細胞内が満たされると細胞壁を破壊し周囲に感染を拡大します、その際に繊毛の委縮と扁平化、さらに剥離と脱落を引き起こして下痢を生じると考えられています。しかし、感染してから下痢や嘔吐の症状が現れるまでのメカニズムには不明点も多い。その背景には、ノロウイルスが人体でしか培養ができず基礎的な研究は遅れている。しかし、ここ数年で20株を超えるゲノム全塩基配列が決定され、ウイルスゲノムが詳細に解析されたことによりリアルタイムRT-PCRシステムが開発されました。また、ウイルス様粒子(VLP)を用いた抗原検出システムの構築である。ゲノムの構造蛋白質領域をバキュロウイルスに組み込み、昆虫細胞で発現させると、ウイルス粒子と酷似したVLPを作出できることが明らかにされた。VLPは構造がノロウイルスそのものであり、ウイルス粒子と同等の抗原性を有するが、内部にゲノムRNAを持たず、中空で感染性はない。現在、互いに抗原 性の異なると予想されるノロウイルスは30種類以上になろうとしているが、その約60%をカバーするVLPの作出に成功している。これらのVLPをウサギ に免疫して得たポリクローナル抗体を用いて構築したEIAキットが、前述の抗原検出システムである。このキットにより、特殊な機器を必要としない迅速かつ 簡便な抗原検出が可能となった。しかし、ノロウイルスの新しい遺伝子型が現在もなお発見され続けており、これらに対応するためには、新たなVLPの作出と 抗体の作製を継続しなければならない。

ノロウイルス感染による食中毒や感染性胃腸炎の発生状況

かつて食中毒の多くを占めていたサルモネラ属菌腸炎ビブリオ食中毒の発生割合が激減し、替わってカンピロバクター属菌ノロウイルス食中毒の発生割合が急増している。ノロウイルス食中毒の発生割合が増加傾向を示しています。発生割合から見ると、カンピロバクター食中毒と併せ、ノロウイルス食中毒対策が重要であることを示している。

感染原因の発生物質別の件数

原因物質別の発生件数は2位

感染の原因物質別の患者数

原因物質別の患者数は1位

ノロウイルス感染による食中毒の年度別発生件数と患者数

食中毒の年度別発生件数と患者数

感染原因物質別の月別発生件数(平成24年から平成26年)

原因物質別の月別発生件数

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