次亜塩素酸ナトリウムによるノロウイルス消毒は厚生労働省も推奨
厚生労働省は、ノロウイルスを消毒する方法として、次亜塩素酸ナトリウムと加熱調理の2つを推奨しています。加熱は物理的な消毒方法で、食品の中心温度が85度から90度で90秒以上の加熱が推奨されています。一方、次亜塩素酸ナトリウムは、塩素成分がノロウイルスに作用して消毒する化学的な消毒方法です。ノロウイルスに感染した患者さんが下痢や嘔吐をした汚物には、強い感染力がある大量の病原体が含まれています。汚染された場所の消毒が不十分だと二次感染となる可能性がありシッカリ消毒する必要があります。ノロウイルスを大量に含む汚物を処理し消毒する際には、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が高く1000ppmの消毒液を使用します。感染予防でトイレや機器類を消毒する場合には200ppm、生野菜など食品を消毒する場合には100ppmで行います。以下の事例ごとに次亜塩素酸ナトリウムを使用した消毒方法について簡単にまとめました。次亜塩素酸ナトリウムを使用した消毒は、使用用途に合わせ濃度を調節する必要があります。市販されている漂白剤を希釈して使用します。酸素系漂白剤は次亜塩素酸ナトリウムが含まれていませんので購入する際には注意しましょう。(消毒効果があるのは塩素系漂白剤)また、漂白剤に含まれている次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、メーカーによって異なります。商品の規格欄を確認してから消毒液を作りましょう。
次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方
ノロウイルスを消毒するには、アルコールではなく次亜塩素酸ナトリウムを使用します。次亜塩素酸ナトリウムは、塩素系漂白剤としてドラッグストアーなどで簡単に購入することができます。塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)は製品によって濃度が違いますので成分を確かめましょう。一般的に販売されている塩素系漂白剤は、1%~12%になります。(ハイター、ブリーチなどの濃度は、約5%です。)下の表は、1リットルの水に加えて作る場合に必要な原液(5%と10%の場合)の量です。作りたい消毒液の量によって、使用する原液の量が異なりますので、原液の濃度を確認してから、下記の表を参考にして消毒液を作って使用してください。
次亜塩素酸ナトリウムを使用した消毒液の作り方
次亜塩素酸ナトリウムの使用用途 | 必要な濃度 | 原液の濃度 | 希釈倍率 | 1リットルの水に加えて作る場合に必要な原液の量 |
食品などの消毒 | 100ppm(0.1%) | 5% | 500倍 | 2ml |
10% | 1000倍 | 1ml | ||
衣服や器具などの消毒 | 200ppm(0.2%) | 5% | 250倍 | 4ml |
10% | 500倍 | 2ml | ||
トイレの便座やドアノブ、手すり、床等 | 3000ppm(0.3% | 5% | 167倍 | 6ml |
10% | 333倍 | 3ml |
次亜塩素酸ナトリウムを使用したノロウイルスの消毒方法
次亜塩素酸ナトリウムは非常に刺激が強く成分です。次亜塩素酸ナトリウムの濃度を高くして消毒をすればノロウイルスを確実に死滅させることができますが、人体への影響や製品の腐食の原因にもなります。その為、次亜塩素酸ナトリウムを使用した消毒は、使用目的にあわせて濃度を調整することをおすすめします。例えば、私たちの口に入る生野菜などを消毒する時は100ppmの次亜塩素酸ナトリウムの消毒液に10分間浸漬して、その後に流水で洗い流します。濃度を高くすれば消毒効果が期待できますが塩素臭が強く食品としては不向きです。一方、ノロウイルス患者さんの嘔吐や下痢などの汚物を消毒する時には1000ppmという濃い次亜塩素酸ナトリウム消毒液で消毒します。その為、消毒液を作る際には、原液が目に入ったり、皮膚に付着しない様に注意しましょう。
使用用途にあわせた次亜塩素酸ナトリウム消毒液を使用
次亜塩素酸ナトリウムの使用用途 | 次亜塩素酸ナトリウム濃度 |
野菜(サラダなど加熱せず生食するもの) | 次亜塩素酸ナトリウム100ppm水溶液10分浸漬もしくは 200ppmで5分浸漬する。どちらも浸漬後は、残留塩素を無くすために流水で5分以上洗う。 |
調理器具等 | 洗剤などで十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で浸すようにペーパータオル等で拭く(加熱できる物については熱湯での加熱が有効)。 |
トイレ・浴槽 | ドアノブ、蛇口、洗面台など家族が頻繁に使う場所へ 300ppmの次亜塩素酸ナトリウムで水溶液雑巾などをたっぷり浸して、消毒したい部分を濡らしながら拭き掃除を行う。その後、水拭きを行い塩素が残らない様にする |
子供の玩具などの | 次亜塩素酸ナトリウム100ppm水溶液に10分程度浸漬したのち流水で洗い流す。または、 100ppm水溶液に雑巾などを浸し拭き掃除を行う。その後、水拭きを行い塩素が残らないようにする。 |
ドアノブ、カーテン、リネン類、日用品 | 次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200〜500ppm) で浸すようにペーパータオル等で拭く。 |
ノロウイルス患者さんが下痢や嘔吐後の清掃(本人) | ペーパータオル等で汚物を静かに拭き取り、1000ppmの次亜塩素酸ナトリウムの水溶液が入ったビニール袋に汚物を入れ密閉をする。床など汚物で汚れた場所は、200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を作りたっぷり浸した雑巾でふき取り掃除をし、その後、水拭きを行う。 |
ノロウイルス患者さんが下痢や嘔吐の清掃(家族) | 感染拡大を予防するためにも出来れば患者本人が使用後に次亜塩素酸ナトリウムで清掃することが好ましい。しかし、重度な下痢や嘔吐の場合、患者本人が出来ない場合には介助者が行うが二次感染に十分気を付ける。 |
患者使用のリネン及び下着類 | ・廃棄するのが望ましいが、煮沸消毒も有効(水やお湯のしぶきを吸い込まない等、二次感染への注意が必要)。・煮沸消毒が行えない場合には、洗剤を入れた水の中でウイルスが飛び散らないように静かにもみ洗いし、有機物を取り除いた後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)の消毒が有効(十分すすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果が高まる。また、もみ洗いした石けん液には次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度1000ppm以上)を加えて、10分間以上置いたのち、捨てること。)。※可能であれば、ふん便・吐物が付着した衣類は、もみ洗いをせず、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度1000ppm以上)に漬け置きする方が洗濯時の二次感染を防ぐ上で好ましい。・布団などすぐに洗濯できない場合は、屋外で、日光に当ててよく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的。 |
ノロウイルス患者さんの汚物を次亜塩素酸ナトリウムで消毒
ノロウイルス感染者がリビングやトイレで突然嘔吐や下痢などをして、室内を汚してしまう事があります。汚物には大量の強い感染力があるノロウイルスが含まれており次亜塩素酸ナトリウムで確実に消毒をする必要があります。
まず、汚染の拡大を防止する為に付近に汚物に近づけない事です。勢いよく下痢や嘔吐をした際には、ノロウイルスによって広範囲に汚染される事があります。次に窓を開け換気をします。その間に次亜塩素酸ナトリウムを希釈して消毒を作ります。清掃する方が二次感染しない様に手袋(二重にする)、マスク、エプロンなどをします。どれも使用後は捨てて良いものにしましょう。次亜塩素酸ナトリウムが含まれている塩素系漂白剤をバケツに入れて水で希釈します。次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、汚物自体を消毒する場合には1000ppm、汚物を取り除いた部分を消毒する200ppm~500ppmの2種類の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用意します。消毒液の作り方は「次亜塩素酸ナトリウムで消毒液を作る」を参照してください。
まず、汚物の上にキッチンペーパーや新聞紙を乗せ、上から1000ppmの次亜塩素酸ナトリウム消毒液をかけます。ちょうど湿布の様に汚物にしっかり次亜塩素酸ナトリウムの消毒液が染み込むように行います。そのまま10分程度放置した後、新聞紙ごと汚物を取り除きます。汚物は、二重にしたビニール袋の中に入れ、さらに次亜塩素酸ナトリウム消毒液1000ppmをたっぷり入れ中身が出来ない様に口をしめます。そして、燃えるごみとして捨てます。汚物自体が取り除かれましたが、床には大量のノロウイルスが付着しています。その為、200ppmの次亜塩素酸ナトリウムの消毒液で綺麗に吹き上げます。何度も広範囲をシッカリ消毒するように拭いてください。そして最後は、水拭きで仕上げます。嘔吐の場合は、かなりの範囲を汚染している場合がありますので広範囲に次亜塩素ナトリウム消毒液に浸しながら消毒をする事をおすすめします。汚染の度合いにあわせて何度か同じ作業をおこない消毒を徹底することもおすすめです。そして、清掃がおわったら使用したマスク、手袋、拭き掃除に使用したタオルや雑巾などを汚物の袋と一緒に入れて燃えるごみとして廃棄します。そして、最後にシッカリ手洗いをして手指を清潔にして作業は完了です。ここでノロウイルスに感染しないように注意しましょう。 詳しくは、ノロウイルス患者さんの汚物処理方法を参照
ノロウイルス患者さんが使用したトイレのノロウイルス消毒方法
ノロウイルス患者さんが嘔吐や下痢したトイレは、広範囲にノロウイルスが飛沫している事が多いです。二次感染を予防する為にも患者さん本人が使用したトイレを次亜塩素酸ナトリウムの消毒液で清掃する事をお勧めします。しかし、高齢者など介助が必要な方は、代わりに家族や介助者が次亜塩素酸ナトリウムで消毒する必要があります。その際には、二次感染しないように注意が必要です。トイレでの作業手順は、一般的なトイレ洗浄同様に洗剤とブラシを使用して清潔にします。床などに汚物が付着している場合には、室内や廊下で下痢や嘔吐をした時の消毒方法を参照してください。ブラシでの清掃が終わりましたら、次亜塩素酸ナトリウム水溶液200ppmで便座などを綺麗に消毒します。特にトイレで注意が必要なのは、蛇口、ドアのノブなどもしっかり消毒するのがポイントです。最後に水拭きをして作業終了です。作業が終わりましたらシッカリ手洗いをしましょう。